二次小説

□38話その後
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「フィリップくん、今夜は眠れるかな。」
亜樹子が心配しつつも、帰るという。
さすがの亜樹子も亜樹子らしい明るさで、フィリップを励ます雰囲気ではないと思ったのだろう。
「明日、元気になってるといいね。」

変身解除して、ハードボイルダーで迎えにいったフィリップは、ひとしきり感情を俺にぶつけたあと、
事務所にもどってから、抜け殻のようにソファに座り続けている。

「フィリップ、コーヒーでも飲むか。」
…無言。
もちろん帰ってから何も食べていない。
「まあな、色々あったからな。」
翔太郎自身まだよく整理しきれていないのだ。
若菜姫と街を出て行くと言って別れたはずが、
突然ファングに変身して、ドーパントと戦うことに。
(あれが、僕の、姉さん…!)
フィリップの叫びは悲痛だった。

ドーパント…若菜姫はその場を去ったが、街を出るという話はなくなった。
そして、フィリップはまたここへ戻った。
翔太郎は思う。
「俺たちにとってフィリップはフィリップだ。」
でもフィリップ本人はどう心の整理をつけることができるのだろう。
翔太郎にも、わからない。

フィリップのそばへ歩み寄る。
フィリップは少し首を上げて翔太郎を見る。
しかしすぐにまた物思いにふけりだした。
翔太郎はふと、フィリップがこのまま消え入りそうな気がして、頭を包み込み顔を寄せた。
「…!」
フィリップは驚いて目を見開いた。
唇の感触が翔太郎をを安心させる。
「翔太郎…、こんな時に…」
「こんな時くらいだからな。お前がそんなに無防備でいるのは。」

翔太郎はそのままフィリップを抱き寄せる。
「よく戻ってきてくれたよ。あのまま別れることになるかと思った。」
確かにフィリップは翔太郎の元を去ろうとした。
若菜姫のために。姉のために。
翔太郎より、血を分けた姉弟を選んだのだ。
「でも、若菜さんは僕の知っている若菜さんではなくなってしまった…。」
抱かれる心地よさを感じながら、消え入りそうな声でフィリップはつぶやく。
「それに、僕は薗咲来人…薗咲家の人間だ。」
ぼんやりと、しかしまっすぐに翔太郎を見つめる。
まるで捨てられた子猫が拾い主にすがるように。
「俺にとってフィリップはフィリップだ。」
翔太郎はきっぱりと答え、フィリップを強く抱き締めた。
そして今度は深く口付けた。

翔太郎は事務所の隅のベッドの方へ目配せをする。
フィリップはふらふらと立ち上がり、翔太郎に肩を抱かれながら、ベッドへ移る。
「今だけは何もかも忘れろ。若菜姫のことも、薗咲来人のことも。」
何かを言おうとしたフィリップの口を塞ぐ。
翔太郎の手はフィリップの胸を這っていた。
敏感に感じる身体はいつもどおりだ。
優しく撫で上げているつもりでも、吐息が漏れる。
下の方にも手が伸びる。
「あっっ」
フィリップが溜まらず声を出す。
声に恥じ入るように頬が赤く染まる。
翔太郎自身も熱くなっていた。
ぬるりとした液体を秘部にあて、指をゆっくりと動かしていく。
やわらいだそこに翔太郎を迎え入れた。

ひとしきり身体を確かめ合った後、腕枕をしてくつろぐ。
ぼんやりとしたフィリップの目の焦点は合い、
いつものようにたあいもない会話をし始めた。
「ドーパントと戦うときはどうしようと思ったのさ。」
「いや、いざというときはダブルドライバーを着ければ、
フィリップの意識だけは来てくれると思った。」
「でも意識だけだよ。僕に触れることはできないよ。」
少し考えて翔太郎は言った。
「エクストリームメモリを呼ぶ。」
未だ謎の残るエクストリームメモリだが、
翔太郎たちの意思でエクストリームメモリをコントロール出来る。
「何処にいようとエクストリームの中からフィリップを呼び出す。」
目を見開いてフィリップが問う。
「そこまで考えて僕を行かせたの?」
「いや、今、それも出来るかもって思った。」
フィリップはふと笑顔を洩らした。
そう、翔太郎とフィリップは心と身体も一つになり、何時でも一緒にいられるのだ。
「まあ、なんだ、だから、フィリップ、お前が俺の手元からいなくなっても、
俺の手元に戻ってくるんじゃないかと思ってたのは、あるかもな。」
腕枕をしていたフィリップの方を見る。
「………。」
スヤスヤと寝息を立てていた。
「聞いてねーし!」
ともあれ、フィリップはこれまで通り過ごしてくれるだろう。
少なくとも表向きは。

(20100618)

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