二次小説

□DVD
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「ねえ、これ観たい。」
テーブルの上には照井竜が置いていったDVDがあった。
グリーンのシルクのパジャマを着て、ハイチェアに座ったフィリップはそう言った。
翔太郎はそういえばフィリップが少し興味を示していたなと思った。
「照井のやつ、持って帰らなかったのかよ。」
DVDプレーヤーはあるので、観ようと思えば観れる。
「翔太郎も一緒に観ようよ。」
紺色の、同じくシルクのパジャマを着て、ベッドに座っていた翔太郎の方を振り向いて、
フィリップが誘う。
「は?俺も?」
ラブストーリー物は翔太郎の趣味ではない。
だいたいこれから楽しい夜が始まるってのに、なんで今から、と思った。

フィリップが適当に選んだ作品は、初恋の淡いストーリーだった。
翔太郎ははちょっと観ただけで飽きてしまい、眠くなってきた。
眠気覚ましに自分用とフィリップ用のコーヒーを淹れて仕方なくつきあう。

話を追っていくと、フィリップには思いあたることがあった。
(僕が若菜さんに初めて会ったときと似ている。これが、<初恋>…なのか?)
初恋の淡い物語は終わり、ハッピーエンドらしくかわいらしいキスで幕を閉じた。
フィリップは感情移入していたのか、ホウっと息を洩らした。
翔太郎にはつまらなく感じた作品に感動したようだった。
「映画っておもしろいね。」
フィリップの「地球の本棚」には何でもあるが、
本棚というだけあって、情報ソースは文字だけだ。
映像になると自分の気持ちが投影されて、より理解が深まったのかもしれない。
映画自体にも興味を示したようだ。

「もう1本観たい。」
「は?」
翔太郎は冗談じゃない、1本観ただけで充分だろうと思った。
だいたい、こんな椅子で観てるだけでもしんどかったのに。
「じゃあ、あっちのソファなら。」
来客用の二人掛けソファの方を指して翔太郎は言った。
ソファでゆったりしたら、観れるかも。と思った。

赤い二人がけソファに座って小さな画面を観ていた。
最初は何気に見ていたが、思ったよりきわどい描写が入っていた。
思わず翔太郎はパッケージを見た。
照井竜がキスシーンの研究にしたDVDだ。
たいした内容じゃないと思ってたのだ。
R−18の文字がないことにホッとする。
翔太郎は、何故ホッとしたんだろうと思う。
しかし翔太郎は不覚にも、フィリップを抱きたいと思ってしまった。
それとなく、髪を撫でる。
フィリップは作品に集中しているのか、気にとめない様子だった。
それをいいことに、少しずつ体を寄せていった。

もともと小さい画面を観ていたので、身体は近づいてはいた。
しかし、あからさまに身体を寄せているのにフィリップが気づくと、
さりげなく離そうとした。
その態度に翔太郎は何故か不満を感じてしまった。
今度は、手を肩にかけようとする。
「翔太郎。」
とがめるような口調でフィリップは言う。
翔太郎はもう映画のことは頭に入らなくなっていた。
「いいじゃないか。そんなの。」
「よくない。今は映画を見たいの。」
翔太郎はきっぱりと断られ、一瞬シュンとしたような顔になってしまった。
しかたなく終わりまでつきあうことにした。
きわどい描写は少しだけで、あとはさわやかなものだった。

翔太郎は待ちきれないとばかりにフィリップの肩を抱き寄せた。
「え、そんなすぐに。」
フィリップは今観た映画の余韻に浸りたかったのだ。
「待ったぞ。俺は。充分に。終わるまで。」
「観てたんでしょ。どこがよかったとか、印象に残ったとか。そういう話したいのに。」
「観てる間だけ楽しけりゃいいんだ。そんなのはどうでもいい。」
「やだ。今すぐなんて。」
フィリップに待たされるなんて、このところなかった。
翔太郎は余計火がついたように、フィリップの胸を撫でようとする。
身を捩り、反らそうとする態度に内心、イラつきを感じた。

しどけない態度に翔太郎は完全に火がついてしまった。
荒々しく赤いソファにフィリップを押し倒す。
翔太郎は思う。誰がこのソファを赤にしたんだろう。
赤は人を燃えさせるのに充分な色だった。
さっきの映画に出てきたように、
顎を下から上へ撫でるようにさわる。
一瞬だがフィリップは目を閉じた。
翔太郎はフィリップがうっとりとした表情をしたように見えた。
そうだ、フィリップの何気ない仕草にものすごい色気を感じることがある。
本人は気づいていないようだが、その表情は翔太郎を満足させた。

「感じやすいカラダだな。」
煽るような翔太郎の言葉にフィリップは目を逸らし、
エンドロールが流れている画面の方を観るように左を向いた。
右の首筋が翔太郎の目の中に飛び込んでくる。
翔太郎はその首筋に口付けた。
ボタンを外し、胸をあらわにし、そのまま胸元まで口付けをくりかえす。
フィリップは右腕で翔太郎をさえぎるような仕草をしたが、
がっしりと翔太郎の左手に手首を掴れてしまった。
翔太郎は右手で画面の方へ向いていたフィリップの顔を自分の方へ向けさせ、
唇を塞いだ。
「んっ…」
フィリップはいつもと違い、抵抗する。
それでも翔太郎は唇に舌を割って入れようとする。
フィリップは左手で翔太郎の頭を掴み、離そうとするが、その左手も、翔太郎の右手に掴まれる。
翔太郎の力は、フィリップを上回る。
赤いソファの肘掛に頭を乗せて、しなだれかかった。
翔太郎は口付けを繰り返す。
フィリップは抵抗するものの、抗う力は足りなかった。
屈辱感を感じる。
力でねじ伏せられている…。
翔太郎は両手の自由を奪ったフィリップを執拗に責めたてた。
翔太郎の熱いものはフィリップの身体に当たり、
熱をさらに帯びていいる。
それでもフィリップは抵抗していた。
翔太郎はフィリップの両手を左手に持ち替え、
右手でフィリップのシルクのパジャマのズボンを引きずりおろした。
フィリップは膝を閉じ、胸の方へと引き寄せた。
翔太郎の右手はフィリップの双丘を、やさしく撫でた。
身体で両足を押し広げ、翔太郎のものをフィリップの股間に当てる。
翔太郎はこのまま、フィリップの中へ入りたい衝動にかられた。
しかし、それは翔太郎を拒むように固く閉じられていた。
翔太郎は片手でトロリとした液体をフィリップの下半身に垂れかけた。

指でゆっくりと押し広げていく。
フィリップは固く閉じたそこに侵入してくるものを必死になって避けようとするが、
同時に来る気持ちよさも、押さえつけるのが困難になってきた。
いつもよりゆっくりとやさしく動かす。
充分にほぐれたそこに翔太郎は熱くたぎったものを押し当てた。
フィリップは抵抗するが、翔太郎が入ってくるのを感じた。
気のせいか、いつもよりゆっくりだ。
翔太郎の左手にまとめていたフィリップの左手を右手で掴み直し、左右に開いた。
シルクのシャツが胸をすべる。
翔太郎はフィリップの中へと深く入っていった。

フィリップは不覚に思う。
結局は受け入れてしまった自分を。
しかし胸の上で満足そうに頬をうずめる翔太郎の顔を見ると、これでいいかとも思う。
そして、ふとつぶやいた。
「翔太郎。僕たちがしている事って、もしかして普通は男女でするもの?」
まっすぐに、だが、ギクリとする言葉を洩らす。
「!」
諸太郎は言葉に詰まる。
そうだ、フィリップは女を知らないだろう。
快感を感じるようになりはしたものの、それは男が女に対するものとはどうしても違う。
(さあ、俺の罪を…数えよう。)
自嘲気味に翔太郎は思った。

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