二次小説

□守るために立ち向かえばいい
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エクストリームでもジュエルドーパントに敵わなかった。
彼女は思うところがあるらしく、翔太郎とフィリップを開放して、
去っていった。

変身を解いたフィリップの表情は曇ったままだ。
事務所に戻ってからもガレージにこもっている。

いつもなら、何か検索しているので、気にもとめないが、
今のフィリップは本棚に入ることが出来ないでいる。

翔太郎はガレージへ向かう。フィリップは椅子に力なくうなだれて座っていた。

「フィリップ?」
声をかけずらいと思いはしたが、そのまま消え入りそうなフィリップを見ていられなかった。

翔太郎に気づき、顔を上げる。
生気のない顔をしている。

「怖い。」

ひとこと、吐息のようにつぶやく。
フィリップの聖域であるはずの本棚へと入ってきた若菜。
そのために混乱し、震え上がっている。

「フィリップ。」
ふわりと包み込むように背後からフィリップを抱いた。
「怖いんだ。もう本棚へは入れない。」
小刻みに震える身体を翔太郎へ預ける。
暖かいぬくもりを感じる。
フィリップは少し震えが和らいだ気がした。

「翔太郎。」
前に回した翔太郎の手を取り、自分の胸へと押し当てる。
心臓の鼓動が高鳴っている。
「翔太郎。」
後ろへ振り向き、翔太郎の唇を探す。
フィリップの仕草に驚く。
翔太郎は迎えるように口付けた。
ゆっくりと、やさしく。
フィリップは胸の中が暖かくなっていくのを感じた。
なおも翔太郎を求める。
翔太郎は強くフィリップを抱き締め、口付けを繰り返した。

ソファベッドに移り、衣服を取って正面から抱き合った。
肌が触れ合うというのはこんなにも心地よかったのか。
フィリップは思う。
翔太郎がいてくれてよかった。
全てを委ね、身をまかせる。
翔太郎は丁寧にやさしく、愛撫していた。
まるでこわれものを扱うように。
愛しくてたまらないというように。
フィリップの肌にまんべんなく口付ける。
耳元から首筋へ。胸元から下腹部へ。
翔太郎自身も熱くなっていた。
ゆっくりと、だがやさしくフィリップの身体へと入っていく。

「本棚に入れるか?」
「今?」
フィリップは驚いて翔太郎を見る。
翔太郎は何か考えがあるようだ。
「やってみる。」
「検索項目は、そうだな、薗咲若菜。」
翔太郎を身体の中に感じながら、フィリップは目を閉じて本棚へ入っていった。

無数の本棚がフィリップの回りを取り囲む。
「薗咲若菜」
本棚は去っていき、一冊の黒い表紙の本が目の前に現れた。
その本をとろうとするが、フィリップの手が止まる。
本の向こう側に若菜本人が立っていた。
「また会えたわね。来人。」
若菜はフィリップが本棚に入るのを感じて、再び入って来ていた。
「もうあなたを取り戻せるかしら。」

若菜はフィリップの手をとろうと、その手を差し伸べてきた。
フィリップは一瞬固まる。
しかし、その背後から翔太郎が現れ、若菜の前へたちはだかった。
「!?なぜあなたが。」
驚いて若菜が言う。

「悪ぃなあ。若菜姫。俺はとっくの昔にここへ入ることが出来たんだ。
入る必要がないから入らなかったけどな。」
信じられないという顔をして、若菜が翔太郎をきつく見据える。
「若菜姫。俺もフィリップも元の若菜姫に戻って欲しいと思っている。」
翔太郎は気圧されることなく若菜に言う。

「だが道はひとつしかねぇ。このまま若菜姫が俺たちと敵対するというなら、
俺はフィリップを守るために、お前に立ち向かう。」
翔太郎はきっぱりと言い放った。

若菜姫は舌打ちをして、消えていった。

フィリップは本棚から戻った。同時に翔太郎も。
「翔太郎。翔太郎。翔太郎。」
フィリップは何度も名前を呼び、翔太郎を強く抱き締めた。
頬にはひとすじの涙が流れ落ちていた。

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