追憶のRiverside moon
□平穏揺らぐ
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【001 平穏揺らぐ】
ここ最近、最高な甘い香りを放ったスパイス、つまり梶川瀬月が転入してきた出来事は、その美しさを一目見ようと企む他のクラスの奴らが廊下にたむろするなど、学校全体を巻き込む大イベントとなった。
5月22日。
しかし5日後、正確には土日を挟んでるから学校生活は3日間なのだが、その間に転入生を取り巻く者はいなくなり、彼女はいつも1人でいるようになった。
「…だって、愛想が全くないんだぜ。喋りかけても無視のオンパレードだし、いつも休憩になると屋上に行っちゃうしさ。さすがの俺も挫けちゃったね。」
そうグチるのは隣の席の友隆だ。
昼休みにこいつとご飯を食べるのは、別に願ってないが今となっては習慣となっている。
転入生はこの昼休みも、まるで人とは関わらず、今頃は屋上にひとりでいるのだろう。
転入生はもったいない生き方をしている。
近頃の俺は転入生を見ているとそう思わずにはいられなかった。