追憶のRiverside moon
□新たな始まり
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【007 新たな始まり】
軽蔑するだろうか。
どうして質問に素直に答えたのだろう。
いや、言わずとももうバレてた事だ。警察に突き出されるなら、もうとっくにされてる。
逆にあれこれ理由付けして嘘をつくより、素直に話した方が潔いだろう。
幸い、藤兎は動揺せずに聞いている。そしてそれ以上深く質問してこなかった。
「次は私の質問。君、死んだことある?」
藤兎と同じよう単刀直入に聞く瀬月。
可笑しな質問だ、そんなわけがない。今、現に生きているのだから。
「なんだそれ?」
と藤兎は予想通りの反応。でも今までの対話で学んだが、当たり前に進まないのが藤兎だ。「あ、でも…」とその後に続く。
「俺、自分の事だからよくわかんないんだけど、前に兄貴が酒に酔ってた時、俺が小さいときに一回心臓停止した事があるんだって言ってた。」
それだ。
この呪眼が反応しない理由、
たぶん、その時が藤兎の死ぬ運命だった日なんだ。
けど、なんらかの偶然で蘇ってしまった。
さっき窓から外を眺めた。
植物でも動物でもなんでもよかった。
ただ生きてるモノを見て、デスモーメント
の能力が消滅してしまったのか、それとも自分とこの男の最期が見えないだけなのか。それだけを確認したかった。
外にいた女性を見たとき確信した。能力は消えてない。自分とこの男だけが反応しないだけだと。
この男も、死を乗り越えた人間なんだと。
「なんでそんな変な質問するんだ?」
さっきの質問は追求せずに、今の質問には追求するのか?
一味にはこの眼の事は話せれた。みんながこの眼の能力を重宝してくれたから。
でも、一般人にこの力の事を話しても、変な目で見られるだけで今まで良いことはなかった。
結局、この能力を受け入れてくれるのは闇の住人たちだけ。
「ごめん、今の忘れて。」
都合がいいかもしれないが今はそう言って逃げるしかなかった。