追憶のRiverside moon

□対面する2人
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 今日の諒児は早朝出勤らしく、先ほど点滴セットを持ちいつもより早く家を出た。

 途中で昨日お世話になったクリニックへ寄り、それを返しに行く予定らしい。


「あの女に渡しといてくれ。薬についてと傷の症状が書いてあるから。」


 そう言って諒児はメモの入った封筒を藤兎に渡して家から出て行った。


 只今の時刻は7時。


 シャワーを浴びて眠気はなくなったし、このままいけば今日は余裕で学校に間に合うだろう。

 諒児がいつもより早く出かけたせいもあり、藤兎もいつもより早く起こされたのだ。
 いつもより時間に余裕があるからか、藤兎は優雅に鼻歌を奏でながらパンツを手にとった。

 パンツに右足を通そうとしたその瞬間、カチャッという音と共に視界の右の方でドアが開くのが見えた。そして恐る恐る中へ入ってくる転入生の姿。


「わッ!ちょッ!待っ!!」


 しかし時すでに遅く、転入生はその声に驚きこちらを見てしまう。

 そして、何の前触れもなくあるモノを目撃してしまった転入生は、細心の注意を払っていたにも関わらず一瞬我を忘れてあたふたとし、「ごめんなさいッ」と一言だけ残してリビングから去っていった。
 
 突然の事に、未だ片足立ちのままの藤兎はただただ放心状態。

 今までたいして面識のなかった藤兎と瀬月は、こういった形で正式な対面を果たした。


 きっと2人とも、この思い出は鮮明に記憶し深く脳に刻んだ事だろう。




 
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