∞シリーズもの3∞

□続・先輩の恋人2
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「おまえこの後なにか予定ある?飲みに行かないか?」

久しぶりにカカシ先輩とのツーマンセルでの任務を終えた夜、ロッカールームで彼から不意にそう誘われた。
そうか今回の任務の「お疲れさん会」だ…と僕は思い、喜んで「行きましょう!」と顔をほころばせた。

「でもいいんですか?まっすぐ帰らなくても。」
「うん。どうせ遅くなるかもと思って、そのように言ってあるから。」

へえ… なんて感心しながら居酒屋へと向かう僕。
イルカさんには悪いが、こうしてカカシ先輩と二人きり…プライベートで飲みに行くのが本当に久しぶりなものだから僕の顔も心も緩みっぱなしだ。

「じゃ、お疲れさん。」
「はい!お疲れ様です!」

冷えたビールを喉に流しこめば、生きていて良かったー!とつくづく思うほどに美味く…

「あれ?でも酒臭さで、まっすぐ帰らなかった事がバレちゃうのでは?」
「そのくらいいいさ。先生は俺と違って寛容だからね。仕事帰りの飲み会くらい何も言いやしなーいよ。」

そう言いジョッキを飲み干して店員に二杯目のジョッキを二つ頼み「早く飲みなさいよ。何かツマミでも頼もうっか。」と、こちらを見るでもなく
テーブルの上のお品書きを見ながら「漬物盛り合わせと… お前どうする?」と聞いてくる先輩。
そんな先輩を見ていて、目の前にいるのが僕ではなくてイルカさんだったら
もっと優しい口調と笑顔で聞いてくるんだろうなぁなんて想像したら微笑ましくなってウフッと笑ってしまうも
「……なに?ジョッキ一杯で酔ったわけじゃないだろーね。」と不気味がられる。
その後二杯目のジョッキを飲み、漬物をポリポリと食べて先輩が僕に聞いてきた。

「お前ってさ、チョコレート貰うんならどんなのがいい?」
「は?チョコレート?」
「て言うか、どんな物を貰ったら嬉しいなぁって本気で思う?」

あー… そういう事。

「………それは御本人に聞いたほうが良いのではないでしょうか。」
「……何よ“御本人”って。俺はお前に聞いてんのっ。」
「じゃあ僕が欲しい物を買って頂けるんですか?」
「笑止。」
「いや、笑止じゃないですって。あれでしょう?イルカさんに聞けないから試しに僕に聞いているのでしょう?」

ハッキリとイルカさんの名を出すとカカシ先輩はムウッと口を尖らせ「だって…」と話しだした。

「バレンタインも近いって言うのに何をプレゼントしたら喜ぶのかなって思うんだけど…」
「歳は同じでも人が違えば欲しい物だって違いますからね。相変わらず物欲も無く、終いには何も入りませんとか言うのでしょう?」
「よく知ってるじゃない。」
「いつも聞かされてますからね。」
「そうだった?」

カカシ先輩は澄ました顔でビールを飲み干すと口布を上げた。

「テンゾウ、ひとつ御願いがあるんだけど。」
「なんですか?」
「近いうちにイルカ先生から、今欲しい物は何かを聞いてもらいたい。」
「僕が、ですか?」
「会話の流れから何気なくって感じでさ。…だって…欲しいものあげたいじゃない。」
「先輩もイルカさんの事となると乙女ですねぇ。」
「ふん。何とでも言いな。じゃ、俺は帰るから。よろしく頼むよ、出来れば十日以内に。」
「…お疲れ様でした。」

「じゃ!」と、恋人の元へ漸く帰れる喜びからかニッコリ笑った目元を見せて先輩は店を出て行った。
気が付けばテーブルの上には二人分の支払いにしては少し多いお金が置かれてあった。
きっと御飯物でも食べて行けという意味だろう。

『やれやれ…。』

近々イルカに接触しなければ… と
この楽しくも面倒な任務にテンゾウは大きく溜息を吐いた。




※続きは季節物の「valentine☆day2017」にて




 

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